【2021年9月追記:執筆当初は現行機種でしたこのレンズですが、いつの間にやらメーカーでは旧製品となっておりました。新品で購入できるのは店舗の在庫限りかと思われます。タイトル及び本文は執筆当初のままにしております。】
先日、安価なニコンFマウント単焦点レンズを探していたのですが、 結局、AI Micro-Nikkor 55mm f/2.8S の程度の良さげな中古があったので、 ブックマークをつけるより早くポチってしまいました。
なぜ、AI Micro-Nikkor 55mm f/2.8Sにしたのか
37年前(1981)発売なのに未だ現行品という謎
何と言っても中古の価格が安い
マイクロ(ハーフマクロ)なので寄れる
やたらと価格コム等の評価が良い
とまあ、理由はこんなところです。
F2.8と単焦点にしては控えめなのですが、正直なところフルサイズでF1.4とかF1.8なんてボケすぎてあまり使う機会はないでしょうから、F2.8でも十分かなと思いました。
開放F1.4のレンズを2段絞って使ったほうが、より良い描写である可能性は高いですが、37年前発売開始したレンズが未だ現行品というところに、不思議な魅力を感じてしまいました。
だって37年前の1981年ですよ? ピンクレディーが解散して、チャールズ皇太子とダイアナ妃が結婚した年ですよ?! 神戸ポートピア'81ですよ?!
ためらうほど高価でもなかったので、ダメならダメで描写を楽しめればいいかなぁと思って購入しました。いつものことながら最悪売れば良いですしね(笑)
価格帯で言えばタダのようなもの*1に分類されます。
見た目がかわいい
おおよその中古相場価格で発見したのですが、とても程度の良い玉でした。
37年の歴史がありますので、37年前製造でも同じ扱いになる?*2かもしれませんが、シリアルナンバーも比較的最近の世代のようで、とてもラッキーでした。
この刻まれた指標に刷り込まれたインキの色使いがカラフルでとてもかわいいです。
そう、なんだかまるでディック・ブルーナ*3が監修したかのような配色です。
これだけでなんだかワクワクしますね。
動きも良い
MFレンズでしかもハーフマクロということもあり、ピントリングの動きは滑らかでストロークもたっぷりあるので微調整しやすいです。
絞りリングはいかにもメカニカルな動作感で、カチャカチャッと小気味よく回すことができます。
一枚目の写真で撃沈
言っても設計が古いので、オールドレンズ的な描写くらいしか期待していませんでした。 とりあえず、昼休み散歩でスナップして歩いて、Macに取り込んでみてびっくりしました。
Nikon D800E ƒ/2.8 55.0 mm 1/640 100
なんですかね。この描写。
カメラの液晶で見てもちょっとやばいと思ってましたが、
うっとりしてしまって、言葉も出ませんでした(^^;
RAWで撮影してますがLightroomのAdobeカラープリセットでそのまま書き出したものです。
ニコンの色乗りは植物向きだなぁと常々感じていましたが、それも相まって、花の可愛さが際立つような描写だなと感じました。
ただ花びらの縁などが二線ボケっぽくなってますが、出てもこれが最大な感じです。
鏡筒の伸びはこれくらい
無限遠から最短距離に近づくほど鏡筒が繰り出して伸びます。 その長さはこれくらいです。
開放からキレキレ
こんな開放からキレの良いレンズが37年前からあったとはにわか信じがたいくらいです。
ちょっと炎天下すぎて線太な感じですが、これでも開放です。
Nikon D800E ƒ/2.8 55.0 mm 1/500 100
歪曲収差も優秀
単焦点ということもあり、歪曲収差はとてもよく抑え込まれていて、建物や人工物を撮影しても気になるような歪みは見られません。
開放での周辺減光
開放でこれくらいの周辺減光になります。 もちろん絞るほどなくなりますが、開放ならこれくらい出てくれた方がいいですよね。(よくない?)
逆光にも強い
オールドレンズにありがちな、フレアで全体にベールがかかってコントラストが低下するなんてことも今のところないです。 わざと意地悪に開放ど逆光にしてみても、普通に紫がかったゴーストが出るくらい。
↑ F2.8
↑ F11
これだけ逆光だと開放でこそそれなりの大きさのゴーストが出ますが、非常に反射が抑えられコントラストが保たれています。
そして気になるパープルフリンジですが、今のところほとんど見れません。
点光源のように反射した金属に少し出ていたくらいです。
開放で撮った場合、直射日光を浴びる白い被写体などが滲む状態はわずかに見れらました。
オールド感は少ないのにどこか懐かしい
よく写るオールドレンズとして、ヤシカコンタックス50mm F1.4をマイクロフォーサーズで使用しています。 こちらは開放近くで撮れば、癖は少ないながらも、いかにもオールドレンズ的な色にじみやフレアがかかった描写をして、それはそれで楽しむにはとても良い感じです。
それでいて絞れば現代のレンズとして遜色ないくらいキレのある写りを見せてくれます。
AI Micro-Nikkor 55mm f/2.8S は絞り開放値こそ違えど、そんなヤシコンツァイスよりも端正なのにコントラストも高く暖かみのある描写で、37年の時を経ても現代のレンズとして販売が継続されていることを納得させてくれます。
Nikon D800E ƒ/2.8 55.0 mm 1/400 100
Nikon D800E ƒ/2.8 55.0 mm 1/1000 100
ニコンすごい
このレンズ、電子接点などないのにもかかわらず、ボディに登録すれば絞り値が連動してExifにも記録されます。
ニコンユーザーにとっては当たり前のことなのでしょうが、びっくりしました。
絞り環を回して絞ってもファインダーは明るいままで、AEが作動します。
最初はどうなっているのだろうと不思議でなりませんでしたが、レンズマウント側にツメがあって絞りを回すたびにそれが動いてボディに伝えているみたいです。
と、人から聞いたものの良くわかってませんが(^^; 非常に原始的でアナログなのに、めっちゃ実用的です。
こういうギミックを介してでも良いレンズが長年使えるってところが、ニコンの良いところなんでしょうね。
マクロプラナーの代替になるか
キヤノンEOS6Dユーザー時代に愛してやまなかったレンズとして、カールツァイスのマクロプラナー50mmF2があります。 このレンズは色気のある非常に艶やかな描写を見せるレンズでした。
いつかはカールツァイス Makro-Planar T* 2/50
実のところこのマクロプラナーの代替にならないかなという目論見もありました。
描写だけで言えば、今のことろマクロプラナーのような繊細な艶っぽさはまだ感じていませんが、濃厚な色乗りで抜群の解像感を持っていると思いました。
というか、まだ天気の良すぎる正午に会社の近所を散歩しただけなので判断つきかねすぎます。
今度は、雨上がりの曇天で苔生したとことか行って試したいですね。
唯一帰宅途中でスナップ。ちょっとマクロプラナーの代替も期待できそう!
とにかく撮影が楽しい
久しぶりに、スナップをしていてワクワクするレンズだなと思いました。
手に持った時の金属鏡筒やしっとりと重みのあるピントリングなんていうレンズの質感がやはり気分を高めてくれます。
しかも寄れる。寄れるレンズはやはり良いですね。
なにやら赤い虫が
そして何と言ってもその描写は、カメラの液晶で見て驚いて、帰ってパソコンに取り込んでうっとりするという2段階で楽しませてくれます。
Nikon D800E ƒ/8.0 55.0 mm 1/125 100
綺麗な玉を見つけたら買わなきゃ損
なぁんて言いすぎと突っ込まれそうですが、全然言いすぎとは思ってません(^^;
現在中古相場が12,000〜34,000円と幅が広いですが、自分が購入したものは17,000円ほどでした。
タダのようなものです。
こんな素敵なレンズ、新品価格でもお買い得に思えますよ。
もし綺麗な中古を見つけたら、迷わず連れて帰ればいいんじゃないでしょうか。